基礎知識

フレイルの薬物治療(漢方薬)

フレイルに陥ると、疲れやすい、体力が落ちた、食欲がわかない、痩せたなど、心身にさまざまな症状が現れます。漢方薬は、こうした高齢者特有の多様な症状の改善に効果が期待できる薬です。

西洋薬と漢方薬の違い

通常、医療機関で処方される薬のほとんどは現代医学の考え方に基づいた西洋薬。1つの薬に単一の成分しか含まれていないことが多く、1つの症状や病気ごとに薬が処方されます。このため、高血圧には降圧剤、腰が痛ければ鎮痛剤、寝つきが悪いときは睡眠薬、糖尿病なら血糖降下剤やインスリン注射というように、たくさんの症状や病気を抱える高齢者は何種類もの薬が必要になります。
薬の効果だけが出てくれればいいのですが、薬同士の相互作用による「副作用」が起きやすくなります。また、高齢になると生理機能が衰えるため、薬が効きすぎて悪い影響が出てしまうことも。「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(日本老年医学会編集)」では、薬の数が増えるほど副作用が起こりやすくなったり、転倒の発生頻度が増えたりすることが報告されています。
一方、漢方薬は体と心を一体として捉え、全体のバランスを整えることで、結果的に症状を改善していきます。そのため、原因が特定できないケースや、「未病」と呼ばれる病気の一歩手前の少し具合が悪いという状態でも治療ができます。フレイルはまさに「未病」ですから、漢方薬の得意分野と言えるでしょう。
さらに漢方薬は、複数の生薬が組み合わされた薬剤であり、多成分であることも特長です。このため、フレイルのような複数の症状に対して1剤で対応できることもあり、大きく薬の量を減らせる可能性があるのです。副作用はゼロではありませんが、高齢者にやさしいものがほとんどです。

フレイル治療に用いられる漢方薬

漢方薬にはたくさんの種類があります。フレイルの治療でよく使われるのが、地黄や山茱萸など生薬の作用で不足した腎を補う「補腎剤」。代表的な補腎剤には、「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」や「八味地黄丸(はちみじおうがん)」があります。疲れやすく、胃腸が弱いという人は気虚と考えられ、「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」などの「補剤」が使われます。気虚に血虚が加わった人に使用されるのが、「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」。食欲不振や疲労倦怠、寝汗、手足の冷え、貧血、病後の体力低下などに効果が期待できます。気虚で食欲がない、胃もたれしているなど、上部消化管の不調が強い人は脾虚と考えられ、「六君子湯(りっくんしとう)」などが使われます。
漢方薬を上手に利用して、元気な長寿を目指しましょう。

>漢方に関する詳しい情報は「高齢者と漢方」をご覧下さい。

監修医師

秋下 雅弘先生

東京大学大学院医学系研究科 老年病学・教授
東京大学医学部附属病院 老年病科・科長


※2022年当時の情報となります

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