基礎知識

高齢者に多い病気・症状

高齢になると若いころに比べて心身の機能や免疫機能が低下するばかりでなく、不測の事態が起きたときに対応できる予備能力も低下し、さまざまな病気にかかりやすくなります。ずっとつき合っていかなければならないような慢性の病気が多く、いくつも病気を抱えている高齢者も少なくありません。
また、回復力も落ちているため病気が重篤化しやすく、治りにくくなります。病気で横になっている期間が長期化すると、筋力が落ちて、関節は硬く縮んで動かしづらくなり、日常生活動作(ADL)が低下して介護が必要な状態に移行してしまいがちです。一つの病気がきっかけで、さまざまな合併症を起こしやすいことも、高齢者の特徴と言えるでしょう。

フレイルに関連する病気や症状

厚生労働省「国民生活基礎調査」(2019年)によると、65歳以上の「介護が必要になった主な原因」のトップ5は「認知症」「脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患」「高齢による衰弱」「骨折・転倒」「関節疾患」。これらはいずれもフレイルと深くかかわっています。
たとえば認知症では、認知症になる前段階として、日常生活に支障が出るほどではないにしろ記憶力などの低下が見られる「軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)」という状態があります。MCIは脳のフレイルのようなもの。その約半数が5年以内に認知症に移行するといわれています。MCIになってもすべてが認知症になるわけではありませんが、MCIの段階から運動や社会参加といった予防的な活動を始めることで、認知症の進行を遅らせることが期待されています。身体的フレイルの一つ「サルコペニア(筋肉量や筋力の低下)」になると、認知症のリスクが増加することもわかっています。
また「高齢による衰弱」はフレイルそのものですし、「骨折・転倒」をしやすくなるのは、身体的フレイルの特徴でもあります。

監修医師

秋下 雅弘先生

東京大学大学院医学系研究科 老年病学・教授
東京大学医学部附属病院 老年病科・科長


※2022年当時の情報となります

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